雪が少ない裾野の村は、いつも乾燥していて気温が低く、30センチも積雪があると根雪になった。昼間、太陽に照らされ表面が溶けだした雪は、夜の寒気でコチンコチンに凍る。翌朝、子供ならば足を取られることもなく、この上を自由に歩き回ることができた。道路でないところを歩いて学校に行く、それは子供にとって冒険心をそそられる、魅力ある行為であった。よく晴れて冷え込んだ朝は、夜の間に水蒸気が凍って雑木林の木々の梢に氷の花が真っ白に咲いた。田んぼに水を張って作ったスケートリンクから青空をバックに見る氷の花が咲いた雑木林は、この世のものとも思えない美しさであった。
また、若者を中心に穴倉に集まり、藁靴を作ったり、藁草履を作ったり、縄を編んで春の農作業に備えていた。穴倉で酒や煙草を覚えることは大人になる一つの通過点であり儀式であった。
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